奥行きのあるナチュラル・サウンドを演出する、 デットリック・デ・ゲアール手作りの真空管マイク
編集作業中のマイスター平井
マイスター平井の「こだわり」 1993年にMeister Musicを設立し、以来200タイトルを越えるディスクをプロデュース、録音してきた このレーベルの主宰者、平井義也は「トーンマイスター(Tonmeister)」というドイツの国家資格を日本人 で初めて取得しました。 直訳すれば「音の職人」となる「トーンマイスター」は、録音の現場において、 それぞれの作曲家の音楽が要求する音色を的確に捉え、演奏家がその持ち味を最大限に発揮するために 何をしたらよいのかをトータルに判断する唯一の存在として、ヨーロッパのレコード会社、放送局、劇場に 置いては絶大な権力を持っています。 音楽家として、技術者として、そして聴き手としてプロフェッショナルであることが要求されるトーン マイスターになるには厳しい訓練が必要です。 1970年代にデトモルト音楽大学に留学した平井は、 音楽学、作曲法、音響工学、電子工学といった理想論からピアノ、チューバなどの実技までをこなすと同時 に、ドイツ各地でカール・ベームやカール・リヒターらの録音現場に立ち会う生活を送りました。 その中で、時に演奏家の解釈にまで踏み込みながら、しかし音楽をより生き生きとした方向へと導いていく トーンマイスターの仕事ぶりを実地で吸収していったのです。 マイスター平井が現在、レコーディングにおいて追求するのは一貫した「シンプルさ」です。ちょうど コンサート・ホールの一番いい席で体験するような自然な音場を再現するために、まず、2本のマイクを 1か所に立てるワンポイント録音を採用。収録する作曲家にふさわしい「響き」に演奏家の「個性」、 そして楽器ごとの「バランス」などを勘案し、全てを満たした「一点」を広いホールの空間から探し出すの は至難の業です。 そこで生かされるのが、トーンマイスターとしての平井の鋭い耳と、経験と、 なにより感性です。 更に、マイクにもこだわります。トランジスタ・マイクが録音現場の主流となっている中、ナチュラルで、 奥行きのある音を求めて、マイスター平井は真空管マイクを使用。スウェーデン人、デットリック・デ・ ゲアールが作る、世界で数組しかないというそのマイクは、高さ27cm、重さ2.2kgという世界一の大きさを 誇ります。 人間の耳以上に敏感に音を拾うマイクのもとで、プレイヤーたちはごまかしの利かない真剣勝負を繰り 広げます。 そんな、心地よい緊張感を伴った幸福な時間が永遠の命を獲得していくためには、仕上げも重要。 Meister Music では、オリジナルをコピーして音質が劣化してしまう可能性を避け、編集が済んだハード ディスクから直接CDの原盤を作る、ダイレクト・カッティング方式で臨場感のあるサウンドをお届け します。 「レコーディングとは、料理のようなもの。新鮮な素材の持ち味を損ねず、すばやく出すことが大事 なんです」 と言うマイスター平井の濃やかな心遣いが伝わる録音は、こうして完成していきます。
■デトモルト音楽大学 トーンマイスター科